【第1回】京都大学 工学部物理工学科
はじめに
こんにちは。自習室da Vinci副代表の奥田修平です。
今回から進路の決め方という連載が始まります。
この連載では、さまざまな大学の学科を紹介していこうと思います。
記念すべき第一回は「工学部物理工学科」について紹介します!
自己紹介
まず、本題に入る前に軽く自己紹介をしますね。
- 【名前】奥田 修平(おくだ しゅうへい)
- 【大学・学部】京都大学 工学部
- 【学科・専攻】物理工学科 エネルギー応用コース
- 【学年】2年
- 【高校の部活】バスケ部
- 【大学のサークル】イベントサークル
- 【得意な科目】数学・物理
- 【苦手な科目】英語
ざっとこんな感じで西京高校では12期生にあたります。
IQ178のMENSA会員です。
それでは次から本題に入っていきたいと思います。
物理工学科について
物理工学科ってどんなとこ??
物理工学科と聞いてどんな勉強をしているイメージをもちますか?
ズバリ、、
『力学(物体間に働く力とそれによって生ずる運動について研究する、物理学の一分野)(ドラマ「ガリレオ」の湯川学みたいな)』をイメージしましたね??
あながち間違ってはいないのですが、物理工学科で学ぶのは力学だけではないですし物理工学科じゃなくても力学を詳しく学ぶ学科があります。建築系なんかは力学を思いっきり使う分かりやすい例ですね。
(また余談ですが京大工学部の留年率は8~9%で、物理工学科の学生の4人に1人が大学院に進学します。物理工学科の男女比は29:1です(笑) 授業料は全学部とも1年間で535,800円です。)
では実際にどのようなことを研究するのかというのは、京大物理工学科でいえば第2学年で配属されるコースを参考にして説明します。
物理工学科では
- 機械システム学コース
- 宇宙基礎工学コース
- 材料科学コース
- 原子核工学コース
- エネルギー応用工学コース
の5つのコースに分けられます。
高校では進路指導で「やりたいことができる学部・学科を選べ」と散々言われていることだろうと思いますが、場合によっては学科よりも先のコースまで見据える必要があります。
そこで、僕が最も参考になると考えているのが『履修要覧』です。
本来は大学生が時間割を組むときに使うものですが、その学部・学科で開講される授業がすべて載っているので、大学ホームページの学科紹介なんかよりもずっとリアルにイメージできると思います。
履修要覧より、各コースの特徴的な授業をまとめました。
主な授業 | 主な就職先 | |
機械システム学コース | 制御工学 設計工学 | 自動車、航空機、船舶、車両、鉄鋼、電気、電子、精密機械、重機、電力、ガス、運輸、通信、ソフト、化学、ガラス、大学、政府系研究機関、サービス、商社など |
宇宙基礎工学コース | 流体力学 航空宇宙機力学 | 航空機、宇宙、機械、運輸、電気、電子、プラント、自動車、大学、国立研究機関、事業団など |
材料科学コース | 結晶物性学 材料組織学 | 電気、電子、通信、自動車、航空機、船舶、車両、鉄鋼、非鉄金属、重機、精密機械、電力、ガス、セラミックス、商社、大学、国立研究機関など |
原子核工学コース | 量子物理学 プラズマ物理学 | 大学、国立研究機関、中央官公庁、電力、ガス、電気、電子、原子力工業、重機、精密機器、自動車、航空機、鉄鋼、非鉄材料、ガラス、セラミックス、通信、エンジニアリング、シンクタンク、銀行、ソフト、情報、コンピュータなど |
エネルギー応用工学コース | エネルギー変換工学 エネルギー・材料熱化学 | 大学、国立研究機関、中央官公庁、電力、ガス、電気、電子、原子力工業、重機、精密機器、自動車、航空機、鉄鋼、非鉄材料、ガラス、セラミックス、通信、エンジニアリング、シンクタンク、銀行、ソフト、情報、コンピュータなど |
また、僕の1年~3年前期までの時間割を載せておくので、忙しさをほかの大学や学部と比較したりして参考にしてください。

1年春学期

1年秋学期

2年春学期

2年秋学期

3年春学期
物理系に進学したい人へ
ここから先はさらに専門的な話になりますが、特に物理系に進学したい人は見てほしいです。
大学の物理は高校の物理とは全然違います。
ですが、高校までで物理が好きになった人なら大学でさらに好きになるのではないでしょうか!
具体的にどのように違うかと言うと
- 大学では支配方程式(運動方程式のように、現象を表現する式)が微分方程式であること
- 剛体のような理想的な仮想の物体を扱うのではなく実際の物体を扱うこと
だと思います。
微分方程式を扱えるようになったことで、表現できる現象が一気に増えますし、剛体ではなくなるので伸びたり曲がったりといった変形が生じます。
特に僕がすごいなと思ったのが、座屈(やわらかい棒を上下から徐々に力を加えていくと、力の大きさがある一定以上になった瞬間にぐにゃ~と曲がる現象)の微分方程式です。
xは棒の軸方向の位置(つまり、棒の先からの長さ)、yは棒の軸に垂直な方向の位置(つまり、曲がった長さ)、Mは位置xでの曲げモーメント(棒を曲げる方向に働くモーメント)、Eはヤング率(材質によって決まる弾性係数)、Iは断面二次モーメント(棒の断面の形状によって決まる)。
この式を、例えば ”棒の上下の端はしっかり固定していて動かない” といった境界条件を考慮して(積分定数を境界条件によって求める)解くことで、ぐにゃぐにゃ曲がった棒のその曲線を関数の形で書くことができます。
これの何がすごいと思ったかと言うと、日常的な感覚で棒がぐにゃ~と曲がるのは予想できますが、その曲線の方程式を(実験結果から数値計算するのではなく)解析的に求めることができることと、材質や断面の形状や棒の長さのような、直感的に座屈に関わりそうだと思うものが見事に方程式に組み込まれていることです。そしてなにより、物を設計するうえで絶対に必要な考え方であり社会で使える方程式であることです。
学科の選び方
工学に興味をもっているみなさんに伝えたいのは、工学は机上の空論ではなく実践的であることです。
つまり工学のおもしろさはいま社会で使われていたりこれから社会の役に立つものを作り出せるというところにあります。
工学部がいいけどどの学科がいいのかわからないという人は、机に向かって勉強するだけではなく身の回りに目を向け、その中で「この仕組みはどうなってるんだろう?」と思ったものを扱う分野が選ぶべき進路だと思います。
さいごに
いかがでしたか? 少しでも物理工学科のイメージが湧いたら嬉しいです。
今回は初回ということもあり、まだまだ分かりにくいところも多かったかもしれませんが、これから随時更新していく予定ですので是非楽しみにしていてください!